刑事告訴対応


この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)

出身:東京  出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。

*近場、遠方を問わずZOOM相談希望の方はご遠慮なくお申し出ください。


1 刑事責任が発生するケース

ビットトレントの利用が違法となるのは、他人の著作物を同意なく無断でアップロードやダウンロードし他者の著作権を侵害する場合です。

すなわち、そもそもの大前提としてビットトレントのソフト自体は何ら違法なものではありません。

しかし、ビットトレントシステムを通じて他人の著作権を侵害する場合には、民事責任だけでなく刑事責任を問われる可能性があります

ただし、著作権法上の刑事責任は「故意責任」(権利侵害を認識した上でそうなることを意図【確定的故意】し、またはそうなっても構わない【未必の故意】と考えて行為に至った場合にのみ責任を負う原則)です。そのため、トレントの利用における著作権侵害においても、かかる故意があった場合に限られます。

すなわち、過失(いわゆる不注意による権利侵害であり、そもそもトレントを利用することで他人の著作権を侵害することの認識がない場合)による著作権侵害では刑事罰の対象とはなりません。

2 刑事罰と手続きの流れ

著作権侵害が認定された場合の刑事罰は、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはこれを併科することがあり得ます(著作権法119条1項)。

刑事罰としては、かなり重く、かつ、かなり大きな罰金の額が設定されていますが、これは著作権侵害により著作権者が被る損害額の高さ、大きさを想定してのものとなっています。

とはいえ、トレント利用による著作権侵害によって、いきなり法定刑の上限の刑罰を受けることはまず考え難いです。

この場合、数十万円~50万円程度の罰金刑はあり得ると思います。

ただし、前科を有している場合や他の犯罪事実と併せて処罰される場合には、刑罰が重くなる可能性もあるでしょう。

また、一部の著作権法違反に基づく刑事手続きは、被害者である著作権者からの「刑事告訴」があって初めて開始されます。

なぜなら、トレント利用による著作権侵害は「親告罪」であるためです。

刑事告訴の告訴期間は、著作権者が発信者の氏名・住所を知った時点、すなわち、開示請求が認められ、プロバイダーから制作会社に発信者情報が開示された時点、または示談交渉を弁護士に依頼している場合には受任通知を送付した時点から6ヶ月間と定められています。

ただし、著作権法123条2項の適用が認められる場合には非親告罪となる点に注意が必要です。この点、当事務所では同条項の存在や内容についての指摘が欠けていましたので改めてここに掲載し、注意喚起いたします。

第百二十三条

第百十九条第一項から第三項まで、第百二十条の二第三号から第六号まで、第百二十一条の二及び前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の規定は、次に掲げる行為の対価として財産上の利益を受ける目的又は有償著作物等の提供若しくは提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的で、次の各号のいずれかに掲げる行為を行うことにより犯した第百十九条第一項の罪については、適用しない。
一 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。次号において同じ。)を行うこと(当該有償著作物等の種類及び用途、当該譲渡の部数、当該譲渡又は公衆送信の態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。
二 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信を行うために、当該有償著作物等を複製すること(当該有償著作物等の種類及び用途、当該複製の部数及び態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。

もし著作権者との間で示談が成立しない場合、警察による逮捕の可能性が生じ、自宅のパソコンなどが警察に押収されることもあります。

具体的な事例としては、「μTorrent」を使用してインターネット上に音楽ファイル等を公開していた男性5人が逮捕されたケース、「BitTorrent」を通じて漫画を権利者に無断でアップロードし、送信できる状態にしていた男性が著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで長崎地検に送致されたケースが存在します。

しかし、トレントの違法利用を理由として利用者が逮捕や書類送致された事例は現状ごく限られています。

当事務所でも、2500件を超えるトレント案件を取り扱っていますが、現状、逮捕や書類送致された事例はありません。
したがって、トレントの違法利用を指摘されたからといって、すぐさま逮捕される事は無いものと考えて構わないと思います。

それでも不安が尽きない、心配が大きいとのことであれば、早期に著作権者と示談をすれば確実に逮捕な可能性は失われます。

そのため、少しでも逮捕を避けたいのであれば、弁護士に依頼の上で早期に示談をすることも検討の余地があります。

3 対処方法

率直にいえば、最も確実な対処法は、著作権者との間で示談を成立させることです。

現状、著作権者は示談が成立すれば、同時に刑事告訴をしないこと(同時に民事事件としてこれ以上の請求も行わないこと)を示談の条件とすることが多いため、これにより刑事告訴を免れ、逮捕や書類送致を回避できます。

しかし、直ちに示談を行うことには、要注意しなければなりません。

現状届いている開示請求に関して示談を行った場合には、その後に別の制作会社から開示請求がされた際に、再度示談をするかどうか、示談が可能かどうか、後々問題となるケースもあるということです。

当事務所では、制作会社が刑事告訴に積極的に行う意向を有しているかスタンスを見極めながら、ログの保存期間を踏まえた解決を目指します。

その結果、これまで当事務所で取り扱ってきた案件やクライアントで、刑事告訴されたケースや逮捕されたケースは1件もありません。

そのため、トレントの違法利用に関して、不安を覚え、捕まることを避けたいとのことであれば、ぜひとも一度、実績ある弁護士に相談することをお勧めします。

執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所


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