
この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)
出身:東京 出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。
このコラムについて
この記事では、トレントアダルト問題について2022年から1000件を超える相談を対応してきたトレント弁護士による、ご相談者様からの疑問等についてひとつひとつQ&A方式にて詳しく解説をします。
現在、プロバイダーから意見照会書が届いた方、制作会社からの通知書を受領した方、交渉中の方、刑事民事の責任についてご不安がある方はぜひご一読ください。
なお、このコラムに先立つQ&A集はこちらからどうぞ。
A. トレント利用の基本と法的責任(Q1~Q39)
1. ビットトレント(BitTorrent)の仕組みと定義
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1 ビットトレント(BitTorrent)とは何ですか?
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P2P(ピアツーピア)通信方式を用いたファイル共有システムの一種です。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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2 P2P通信方式とはどのような仕組みですか?
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特定のサーバーを介することなく、ネットワーク上のユーザー(ピア)間でファイルを小さなデータ(ピース)に細分化し、分散してやり取りする仕組みです。
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3 トレントの仕組み上、なぜ著作権侵害が発生しやすいのですか?
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利用者が特定のファイルを違法ダウンロード(入手)するのと同時に、既に所持しているファイルの一部(ピース)を他のユーザーに提供(違法アップロード)する仕組みになっているためです。
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4 トレントでダウンロードを完了したユーザーは、何と呼ばれますか?
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シーダー(Seeder)と呼ばれ、ダウンロード中のユーザー(リーチャー)からの求めに応じてファイルをアップロードします。
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5 トレントのソフトウェアやシステム自体は違法ですか?
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トレントシステム自体は直ちに法的に違法というわけではありません。問題となるのは、トレントを通じて著作権侵害行為が行われることです。
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6 トレントを利用する際の著作権侵害行為は、具体的にどのような権利を侵害しますか?
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著作権者の許諾なくアップロード行為に関与することで、著作権(複製権、公衆送信権、送信可能化権)を侵害することになります。
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7 トレント利用者が著作権法上違法となるのは、ダウンロードとアップロードのどちらの行為ですか?
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著作物を無断でダウンロード(受信)した場合、および自動的にアップロード(公衆送信権の侵害)される行為の両方が著作権法上の違法行為となります。ただし、アダルトビデオなどの開示請求の局面ではアップロード行為がトレント監視システムにより補足され、開示請求の対象となります。
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8 トレントの仕組みを理解せずに利用し、「知らなかった」「気づかなかった」という弁解は通用しますか?
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民事上の責任においては、通常通用しません。裁判所は、システムを容易に理解し得たのに理解しないまま利用したとして、故意または過失による不法行為の成立を認めています。他方で、刑事責任は故意責任とされていることから、これが立証されない限りは刑事責任は課されません。
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9 ダウンロード後にファイルをすぐに削除すれば、アップロードによる責任を完全に逃れられますか?
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アップロードを完全にゼロにすることは不可能です。トレントはダウンロードの開始と同時にアップロードが始まるため、ダウンロード完了までに既に関与している点に注意が必要です。
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10 ファイルをすぐに削除した場合でも、違法性があることに変わりはありませんか?
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はい、違法であることには変わりありません。
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11 ファイルをすぐに削除した場合、民事上の責任において有利な点はありますか?
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相手方が被った実損害はごく限られたものに留まると考えられ、ダウンロード回数が少なければ実損害額も小さくなります。このことは裁判例でも認められており、利用者が負担すべき賠償額は少額に抑えられています。
2. 法的責任(民事・刑事)の概要
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12 著作権侵害が発生した場合、民事上および刑事上のどのような責任が生じますか?
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民事上は不法行為責任(損害賠償義務)、刑事上は著作権法違反による刑事罰が生じる可能性があります。
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13 著作権法違反の刑事罰はどのようなものですか?
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10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科(両方)が科される可能性があります。
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14 民事上の責任は、故意がなくても問われますか?
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はい、民事上の不法行為責任は故意責任のみならず、過失責任も問われます。
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15 刑事上の責任は、過失のみの場合でも問われますか?
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いいえ、刑事上の責任は故意責任が前提であるため、過失のみの場合には犯罪とはならず、刑事責任を問われることはありません。
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16 裁判所は、ビットトレント利用者の故意または過失をどのように判断していますか?
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ビットトレントの性質を容易に理解できたのに理解しないまま利用したとして、過失による不法行為の成立を認めています。
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17 刑事責任における「故意」とは、具体的にどのような状況で認められますか?
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自分のファイルがアップされることの「未必の故意」が認定される余地は否定しきれません。ただし、未必の故意の認定は非常にハードルが高いとされています。
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18 どのような悪質な事情があると刑事事件化されやすいですか?
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商業的に違法行為を行っていた、または大量の作品をアップロードしていたなどの悪質な事情がある大々的な著作権侵害行為は、刑事事件化されるとみられています。
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19 刑事事件化を回避するために最も重要なことは何ですか?
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著作権侵害は親告罪(被害者の告訴が必要)であるため、被害者たる著作権者(制作会社)との示談を成立させることで刑事告訴を回避することです。もしくは刑事告訴の期限を経過することでも責任が回避可能です。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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20 示談が成立した場合、刑事罰や前科はどうなりますか?
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示談が成立すれば、刑事罰にならず、前科もつきません。
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21 刑事告訴の期限はいつですか?
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加害者が判明してから(発信者情報開示の結果が出てから)6カ月間です。
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22 現在、アダルトビデオのトレント利用による逮捕事例はありますか?
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当該法律事務所の知る限り、本日時点でビットトレントを通じてAVをアップロードまたはダウンロードしたことに対する逮捕や刑事告訴の事例は把握されていません(2025年10月現在)。
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23 トレント利用が原因で逮捕された事例は過去にありますか?
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音楽ファイルや漫画ファイルのアップロードで逮捕・送致された事例は存在します。
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24 民事訴訟を提起される可能性はどれくらいですか?
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当該法律事務所の統計上、民事訴訟になるケースは依頼者の1%に満たない(確率にして1%未満)のが実情です(2025年現在)。
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25 著作権侵害以外に、開示請求の根拠として主張される権利はありますか?
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肖像権侵害、パブリシティ権侵害、AV新法に基づく開示請求なども増加しており、対応が複雑化しています。
3. 開示請求のきっかけと目的
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26 著作権者(制作会社)はどのようにして違法アップロードを検知しますか?
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P2Pファインダーなど(ITJ法律事務所の場合には株式会社HDRによるBittorrent監視システム、赤れんが法律事務所の場合には株式会社utsuwa社によるシステム)のトレント監視システムを使用し、自社の著作物について無断で違法なアップロード行為がされていないかを頻繁に監視しています。
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27 制作会社はどのような情報に基づいて開示請求を行いますか?
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著作権侵害行為に関与していると検知されたIPアドレスとタイムスタンプといった情報に基づき、プロバイダーに対して開示請求を行います。
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28 制作会社が発信者情報開示に取り組む主な目的は何ですか?
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著作権(公衆送信権、複製権)を守り、営業上の損失を回避し、損害を回復するためです。また、開示結果を経て、開示された個人に対して示談交渉を持ちかけます。
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29 トレントファイル検出システムなどの監視能力は裁判所で認められていますか?
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裁判所は検出システムの信用性を認めており、確認試験により複数回IPアドレス等の特定の結果を確認するなど、正確性が確認されることで、特定の結果に信頼性が認められるとしています。
具体的には「IPアドレス等の特定方法の信頼性について、東京地判平成26年7月31日、東京地判平成23年11月29日及び東京地判平成23年3月14日では、権利侵害情報のダウンロード時に発信元のIPアドレス、ポート番号、ファイルハッシュ値、ファイルサイズ、ダウンロード完了時刻等を自動的にデータベースに記録する機能を有するシステムを請求者が用いる場合には、確認試験により複数回IPアドレス等の特定の結果を確認するなど、正確性が確認されること、その他当該システムによる特定方法の信頼性に疑いを差し挟むような事実がないこと等をもって、当該システムによるIPアドレス等の特定の結果に信頼性が認められるとしている。」とされています。
「プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドライン」p8
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30 開示請求は、アダルトビデオ(AV)以外に、どのような著作物に関するものが多いですか?
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音楽、映画、漫画、アダルトビデオなど、個人間で容易にやりとりできるファイルが対象です。
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31 制作会社の動画を著作権法に違反する形でアップロードしたことについて、利用者に落ち度はありますか?
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はい、著作権法に違反する形でアップロードをしたこと自体は事実であり、そのことについての落ち度は当然否定できません。
4. 損害賠償額の算定と裁判例
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32 損害賠償額はどのように計算されますか?
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原則として「当該ファイルのダウンロード回数 × 当該ファイルの利益額」を基準に算定されます。これは東京地裁、知財高裁の考え方でもあります。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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33 著作権侵害の損害算定に関する著作権法上の規定はありますか?
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はい、著作権法114条1項に、侵害者が販売等した侵害製品の数量に、著作権者が侵害行為がなければ販売できた単位数量あたりの利益額をもって損害額と推定する規定があります。
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34 裁判例において、制作会社が請求したDVD/Blu-ray版の料金に基づく損害計算は認められましたか?
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いいえ、裁判所はDVD/Blu-ray版ではなく、ダウンロード版の料金から制作会社が受け取っていた利益額に基づき計算すべきとして、請求を認めませんでした。
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35 過去の裁判例(東京地裁・知財高裁)では、巨額な請求に対し、実際に認容された賠償額はいくらでしたか?
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被告(制作会社側)が請求した約2,000万円から1億6,700万円に対し、裁判所が認容した賠償額は、ダウンロード回数が少なかった事案で約3万円から約6万円の範囲に留まりました。
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36 裁判例で賠償額が低額に留まった主な理由は何ですか?
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原告らのダウンロード回数がさほど多くなく、対象動画も一つだけだったこと、および裁判所がダウンロード版の利益額に基づく計算方法を採用したためです。
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37 ダウンロード回数が多数回に及んだり、複数の動画をアップロードしていたりした場合、損害額はどれくらいに膨れ上がる可能性がありますか?
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損害額は容易に数百万円単位に膨れ上がる可能性があり、例えば3作品合計で2,342,000円といった試算例もあります。
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38 ユーザーが負う賠償責任の期間は、いつからいつまでと判断されていますか?
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ユーザーが責任を負うのは、トレントファイルを利用し始めた日(アップロードを開始した日)から、利用を完全に停止した日(ファイルを削除したと申告した日など)までの期間に限られます。
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39 トレントファイルを削除したことを利用者側が積極的に立証する必要がありますか?
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いいえ、裁判所の考え方は、「利用の終期」を利用者側が立証する必要はなく、むしろ制作会社側で積極的に「いつまで利用していたか」を立証すべきと考えています。
B. プロバイダーからの意見照会書への対応(Q40~Q89)
1. 意見照会書の確認事項と提出期限
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40 意見照会書は誰に送付されますか?
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プロバイダーの契約名義人に送付されます。
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41 意見照会書には、どのような発信者情報の開示が求められていますか?
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氏名または名称、住所、電話番号、電子メールアドレスの開示が求められています。
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42 意見照会書が届いたら、まず何をすべきですか?
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慌てることなく、①トレントの利用有無、②利用期間、③対象著作物の確認、④意見照会書に記載された日時(タイムスタンプ)にパソコンを起動していたか否かなど、事実確認を冷静に行うことが重要です。
この点、意見照会書を受領した方に向けた詳しい解説については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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43 意見照会書に記載された日時(タイムスタンプ)の確認は、何のために必要ですか?
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自分がまったくトレントを利用していない場合や、トレントを利用していない期間や時間帯のタイムスタンプであれば、開示請求を拒否する根拠となり得るためです。
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44 意見照会書の回答期限は通常どのくらいですか?
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一般に1週間ないし2週間程度とされています。プロバイダーによっては1週間と設定しているところもあります。
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45 回答期限を過ぎてしまった場合、自動的に「同意した」とみなされますか?
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いいえ、回答期限を経過しても「同意をした」とみなされる訳ではなく、「開示に関して特段の主張を行わないもの」として扱われます。
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46 回答期限が近い場合や過ぎそうな場合、どうすればいいですか?
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プロバイダーに対して回答期限の猶予を求めることが可能です。とにかく「慌てて結論を決めないこと」が大切です。
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47 意見照会書を受け取っても回答書を提出せずに放置(無視)することは推奨されますか?
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いいえ、お勧めしません。本来取り得る最善の解決策を逃すことにもなりかねません。
2. 回答の選択肢(同意・不同意)とプロバイダーの判断
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48 意見照会書への回答の選択肢は何ですか?
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開示に「同意」するか、「不同意」とするかのいずれかです。
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49 開示に「同意」で回答した場合、どうなりますか?
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契約者の氏名、住所などの情報が制作会社側に開示され、その後の示談交渉や損害賠償請求へと進みます。
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50 開示に「不同意」で回答した場合、開示を避けられますか?
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開示請求の方法によります。裁判所を介さない任意開示請求(テレサ書式)による場合は、不同意とすることで情報開示を避けられる余地が十分にあります。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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51 裁判所の手続き(発信者情報開示命令申立て)を経ている場合、不同意回答は有効ですか?
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裁判所の手続きを経ている場合、不同意で回答しても、著作権侵害の明白性等が認められやすいため、裁判所が開示命令を発令するケースが通常です。
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52 テレサ書式による開示請求の場合、不同意回答を無視した場合よりも積極的に不同意回答をした方がリスクは低まりますか?
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はい、任意開示請求の方法の場合には、回答をしないことのリスクは高くはないものの、回答をしないよりはむしろ積極的に「不同意」で回答をした方がリスクは低まります。
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53 意見照会書に回答せず無視した場合、最終的な結論は誰が決めますか?
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裁判所が開示命令申立て手続きを経ている場合は裁判所が、テレサ書式による場合はプロバイダーが判断し、最終的に結論が決まります。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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54 プロバイダーが不同意回答にもかかわらず開示を判断することはありますか?
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はい、著作権侵害の場合、権利侵害の成否の判断が容易であるため、不同意回答であってもプロバイダーの判断で開示に応じることがありえます。ただし、最近では不同意の回答の場合には開示に応じないプロバイダーの方が大半だとみられます。
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55 プロバイダーが意見照会書を発出せずに開示の判断をするケースはありますか?
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はい、ソニービズネットワークス株式会社など、一部のプロバイダーは意見照会書を発出せずに開示の判断をするところもあるため注意が必要です。
3. 身に覚えがない場合の対応
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56 身に覚えがない場合、どのような理由で不同意回答ができますか?
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①トレントを利用した事実がない、②当該ファイルに見覚えがない、③契約者以外の者(家族、友人、従業員)が利用した、④タイムスタンプの時期に利用可能性がない、などが考えられます。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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57 自分がトレントを利用していない誤検知の可能性はありますか?
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はい、トレント検出システムも完璧とは言い切れず、自分が利用していないのに検出されるケースがあり得ます。
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58 誤検知の場合、不同意回答をすれば開示請求を拒否できますか?
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はい、誤検知の場合には不同意で回答し、発信者情報開示命令申立手続きの中で争えば請求が棄却されることもあり得ます。
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59 契約者以外の同居する家族がダウンロードしていた場合、どう対応すべきですか?
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家族によるダウンロード行為が判明した場合は、積極的に同意の回答を検討して良いでしょう。プロバイダーによっては、実際に利用した家族が回答することが可能な場合もあります。
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60 同居の家族が利用していたが、プロバイダーが契約者以外の回答を受け付けない場合、どうなりますか?
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契約者が同意で回答した上で、制作会社からの通知書をダウンロードを行った家族に渡し、家族から直接示談交渉を行ってもらうのが良いでしょう。
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61 友人が自宅のWi-Fi経由でダウンロード行為を行っていた場合、誰が責任を負いますか?
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制作会社への損害の責任を負うのは、ネット回線の契約者ではなく、直接ダウンロードを行った友人になります。
4. プロバイダーのログ保存期間と回答期限の具体例
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62 プロバイダーが発信者情報(ログ)を保存している期間は一般的にどのくらいですか?
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一般的には半年から1年程度のところが多く、長いところでは2年、またはケースによっては保存期間の定めがないプロバイダーもあります。
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63 プロバイダーのログ保存期間は、トレント案件の解決方針にどのように影響しますか?
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ログ保存期間の経過を待ち、追加の開示請求リスクがゼロに近づいた段階で、最終的な示談の当否を判断するための重要な要素となります。
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64 ログ保存期間が「約6ヶ月」とされているプロバイダーの例を教えてください。
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ビッグローブ株式会社、株式会社倉敷ケーブルテレビ、株式会社TOKAIコミュニケーションズ、株式会社朝日ネット、鹿沼ケーブルテレビ株式会社などがあります。
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65 ログ保存期間が「1年」とされているプロバイダーの例を教えてください。
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株式会社エネコム、中部テレコミュニケーションズ株式会社(長いと2年)、株式会社トコチャンネル静岡、知多メディアスネットワーク株式会社、株式会社秋田ケーブルテレビなどがあります。
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66 ログ保存期間が「最低4年」と非常に長いプロバイダーはありますか?
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はい、株式会社新潟通信サービスが最低4年とされています。
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67 ログ保存期間が「非公開」または「不明」のプロバイダーの例を教えてください。
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ソフトバンク株式会社、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社、株式会社KDDI、株式会社NTTドコモ、株式会社オプテージなどがあります。
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68 プロバイダーの意見照会書への回答期限が「1週間」とされている例を教えてください。
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ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社、株式会社朝日ネット、株式会社新潟通信サービス、株式会社ちゅピCOMなどが該当します。
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69 プロバイダーが契約者以外の回答を認めないプロバイダーの例を教えてください。
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ソフトバンク株式会社、株式会社NTTドコモ、狭山ケーブルテレビ株式会社などがあります。
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70 意見照会書に回答する際、弁護士に依頼すれば回答書の作成・提出は自分で行う必要がありますか?
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いいえ、弁護士が回答書を作成し、プロバイダーへ発送を代行します。依頼者様ご自身で記入・発送する必要はありません。
5. 意見照会書を無視するリスク
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71 意見照会書を無視すると、民事訴訟のリスクが高まるという客観的データはありますか?
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いいえ、開示請求や示談を無視したらこれらのリスクが高まるという客観的データはないとされています。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。https://kakehashi-law.com/terrace/5811
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72 意見照会書を無視することで、本来取り得る最善の解決策を逃す可能性はありますか?
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はい、安易に無視すると本来取り得る最善の解決策を逃すことにもなりかねません。
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73 意見照会書を無視した場合、どのようなリスクがあると言われることがありますか?
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①民事訴訟のリスクが高まる、②刑事事件のリスクが高まる、③示談よりも高額の賠償になる、④差し押さえのリスクがある、などと記載するウェブサイトもありますが、これらは過剰な表現です。当事務所としては、意見照会書を無視しただけでこれらのリスクが急激に高まるなどのことはないと考えています。あくまで冷静にご判断ください。
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74 裁判所の発信者情報開示命令申立て手続きを経ている場合に、回答書の提出を無視することはリスクがありますか?
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無視しても、不同意で回答した場合と同様の結果(裁判所が開示命令を発令するケースが通常)になるため、無視すること自体に何らのリスクはありません。
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75 任意開示請求(テレサ書式)の場合、回答を無視した場合よりも積極的に「不同意」で回答した方が良いですか?
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はい、任意開示請求の方法の場合には、回答をしないことのリスクは高くはないものの、回答をしないよりはむしろ積極的に「不同意」で回答をした方がリスクは低まります。
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76 裁判所を介さずに行われる任意開示請求の方法を何と呼びますか?
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一般社団法人テレコムサービス協会の書式(テレサ書式)に基づく任意開示です。
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77 テレサ書式による開示請求で不同意の回答をし、不開示となった後に、開示請求者がわざわざ発信者情報開示命令申立手続きを行ったケースはありますか?
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現状、そのようなケースはないようです。
6. 家族・会社への影響
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78 意見照会書が届いたことで、会社にトレント利用が知られる心配はありますか?
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いいえ、プロバイダーの意見照会はプロバイダー契約名義人に送付されるものであり、自宅で個人が行っている問題なので会社とは全く無関係の問題であるため、会社に判明する仕組みにはなっていません。
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79 制作会社からの通知書(示談交渉)が、会社に知られる心配はありますか?
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いいえ、通知は開示された住所に届くため、会社に知られることにはなりません。
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80 家族に知られずに解決したいのですが、可能ですか?
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弁護士に依頼することで、プロバイダーや相手方弁護士との煩雑なやり取りをすべて代行し、郵送物等に配慮することで、家族に知られるリスクを軽減できることがあります。
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81 弁護士に依頼した場合、郵送物などで家族に知られるリスクを完全に防げますか?
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弁護士がやり取りを代行することでリスクは軽減できますが、プロバイダーは追加の意見照会書について契約名義人にしか送付しない態度をとるところも少なくないため、注意が必要です。
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82 自分が契約者ではない場合(例:回線契約者が親や妻)、誰に意見照会書が届きますか?
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プロバイダーの契約名義人(この場合は親や妻)に届きます。
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83 回線契約者ではない実際の利用者(自分)が弁護士に依頼する場合、契約者(母や妻)の来所やZoom等が必要ですか?
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遠方の場合はオンライン(Zoom)での相談が広く活用されており、全国47都道府県からの依頼に対応可能です。ただし、委任状や契約書に契約名義人の署名・捺印が必要となる場合があります。その際には書類の郵送等によりやりとりをします。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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84 刑事事件になった場合、仕事(身分)への影響はありますか?
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刑事事件になり、職を失うことを心配する声はありますが、私的な利用で刑事事件になるリスクは極めて低いとされています。
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85 示談が成立すれば、刑事罰にならず前科もつかないため、仕事や将来への影響を回避できますか?
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はい、示談成立により刑事罰や前科を回避できます。
7. 利用者の精神的負担と解決までの期間
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86 突然の意見照会書を受け取った利用者の心理的状況はどのようなものですか?
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強い驚きと不安を伴い、動揺し、落ち着いて仕事もできない、生きた心地がしない、ストレスで死にそう、など強い不安を抱える方が多数います。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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87 弁護士に依頼することで、精神的な不安は軽減されますか?
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はい、煩雑なプロバイダーへの対応や、相手方弁護士との交渉窓口を全て引き受けるため、精神的な負担を大きく軽減できます。
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88 最終的な解決までどれくらいの期間を想定すべきですか?
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ログ保存期間の超過を待って追加の開示が来ないことを念頭に置いた解決を目指す場合、プロバイダーに応じて半年から1年、長いと2年以上を想定しています。
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89 弁護士が受任通知を送付すると、相手方からの請求や督促はどうなりますか?
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制作会社側の弁護士との交渉窓口となり、以後の請求や督促がピタッと止まることが大半です。
C. 開示後の示談交渉とリスク(Q90~Q131)
1. 示談交渉の開始と通知書の内容
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90 プロバイダーから情報開示が行われた後、最初に制作会社側からどのような通知が届きますか?
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制作会社の代理人弁護士から、示談の申し入れとして示談金(和解金)の提示を含む通知書が送付されてきます。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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91 制作会社からの通知書には、どのような内容が含まれていますか?
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通常、著作権法違反の指摘や民事上の損害賠償請求に加え、刑事責任に関する指摘も記載されています。
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92 制作会社側の代理人弁護士には、どのような法律事務所がありますか?
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主にITJ法律事務所(全体の約6割を担当)、赤れんが法律事務所(約2〜3割を担当)、弁護士法人オルビス、八重洲コモンズ法律事務所(旧称:四谷コモンズ法律事務所)などが交渉窓口となっています。
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93 ITJ法律事務所は、交渉の際にどのような資料を提示してきますか?
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当該ファイル、作品が具体的にどの程度他の利用者にダウンロードされたのかの計数や、ファイルの利益額を示し、裁判所の判断基準に沿うような損害額計算をしてくることがあります。
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94 ITJ法律事務所からの提示で、実損害額の計算資料がない制作会社もありますか?
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はい、SOD株式会社などの制作会社については実損害額の計算資料がないとして提示がない場合があります。
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95 ITJ法律事務所が提示する示談金額は、時期によってどのように変動しましたか?
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2023年9月頃は個別33万円、包括77万円。2025年5月頃は個別44万円、包括88万円。2025年9月(現在)は一部制作会社に限り個別8万円、その他の制作会社は個別44万円、包括88万円となっています。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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96 ITJ法律事務所の提示金額のうち、個別合意の「8万円」は、裁判所の実損害額と比較して妥当ですか?
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はい、現在の個別合意の8万円は、裁判例の考え方に照らした実損害額とさほど大きく開きはなく、客観的で妥当な示談相場に基づく提示だと評価が可能です。
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97 ITJ法律事務所との個別合意には、どのような注意点がありますか?
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表明保証条項(このファイル以外にトレント利用がないこと、違反した場合の違約金110万円を支払うという条項)を求められるので注意が必要です。
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98 ITJ法律事務所が提示する包括合意の「88万円」は、どのようなケースでは妥当と評価できますか?
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利用の数が多いケースであれば、包括合意88万円は妥当な示談水準と評価可能です。
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99 赤れんが法律事務所の示談提示額はどのように計算されますか?
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1ファイル、作品のみの利用であれば50万円、以後、作品が1つずつ増えるごとに20万円を加算するという示談提示があります(例:3ファイルで90万円)。
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100 赤れんが法律事務所は、示談交渉において減額に応じますか?
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はい、他の法律事務所と異なり、若干の減額(10万円)に応じるスタンスです。
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101 赤れんが法律事務所の提示額は、裁判例に照らして高額な傾向にありますか?
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はい、裁判例に照らした賠償額の水準と比べて高額な傾向にあり、「示談金ビジネス」と非難されやすい側面があります。
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102 八重洲コモンズ法律事務所や弁護士法人オルビスからの示談提示額の傾向を教えてください。
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個別合意は1ファイルあたり44万円、包括合意77万円の提示があることが通常です。
2. 示談交渉の進め方と拒否のリスク
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103 制作会社側からの提示金額は妥当ですか?
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制作会社側が提示する示談金額は、裁判所の認容額と比較して過大である可能性があるため、冷静な判断が必要です。
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104 制作会社の提示額に従うだけであれば、弁護士に依頼する必要はありませんか?
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はい、単に相手方弁護士からの提示条件に従うだけであれば、ご自身で相手方弁護士に連絡すれば合意書を取り交わせるため、弁護士に依頼する必要はまったくありません。
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105 提示された示談金額が高額なため示談を拒否した場合、どうなりますか?
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制作会社側の判断で民事訴訟に移行する可能性がありますが、実際に訴訟提起に至ることはかなり少ないです。
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106 示談を拒否した場合、民事訴訟になる確率について、当事務所の統計を教えてください。
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当事務所の統計によると、民事訴訟になるケースは依頼者の1%に満たない(確率にして1%未満)のが実情です(2025年現在)。
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107 示談を拒否したために刑事事件になるリスクは高まりますか?
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いいえ、私的に少し利用した程度の事案で、示談を拒否したために刑事事件になったケースは当該法律事務所では見受けられていません。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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108 示談交渉の書面(通知書)を無視し続けた場合、どのようなリスクがありますか?
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示談が成立しないことになり、民事訴訟を提起される可能性が生じます。また、次に届く通知書において示談金額を少しずつ値上げして提示してくるリスクがあります。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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109 示談の通知を無視したために民事訴訟になる確率が高くなるという統計上のデータはありますか?
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いいえ、そのような客観的データはありません。
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110 示談交渉において、提示金額の「減額交渉」は可能ですか?
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制作会社側は原則として一律の減額には応じないスタンスを取っています(赤れんが法律事務所を除く)。
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111 減額交渉に応じない場合、弁護士はどのような方針を取りますか?
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提示金額を払わない(ゼロ解決)、または減額するための弁護活動を行います。
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112 示談金を一括で支払うことが難しい場合、分割払いは可能ですか?
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示談金を分割払いで支払うことは可能ですが、ITJ法律事務所の例では、分割払いを選択すると総額が割り増しになるような計算方法となっているため注意が必要です。
3. 示談の種類とタイミング
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113 示談の合意形態にはどのような種類がありますか?
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開示請求の対象となった特定のファイルに限定した「個別合意」と、その制作会社の他のファイル利用も含めて全て解決する「包括合意」があります。
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114 個別合意のメリットとデメリットは何ですか?
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メリットは、特定のファイルに限定した示談であること。デメリットは、その制作会社の他のファイルに関する利用が後で見つかった場合、再度請求されるリスクが残ることです。
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115 包括合意のメリットとデメリットは何ですか?
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メリットは、その制作会社からの追加の責任追及を免れること。デメリットは、費用が高額になる傾向があること、および包括合意をする制作会社が多数になった場合に負担額が一気に数百万円に膨れ上がることです。
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116 弁護士が安易な即示談を推奨しない理由は何ですか?
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トレント案件では複数の制作会社から開示請求が来る可能性が高いため、早期に示談すると「一旦示談したけどまたすぐ届いた」という再度の不安や、際限のない示談金負担に繋がるためです。
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117 示談を最終決定する最も適切なタイミングはいつですか?
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プロバイダーのログ保存期間が超過し、追加の開示請求リスクがゼロに近づいた段階で、最終的な示談の当否(和解するか拒否するか)を判断することが最善の戦略です。
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118 ログ保存期間の経過を待つことで、費用の総額を確定できますか?
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はい、ログ保存期間の超過を待つことで、ご自身が負担することとなる賠償金の総額を全て確定させてから示談に進めることが可能となります。
4. 示談拒否の具体的な判断基準
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119 「示談拒否」とは、どのような場合に検討されますか?
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制作会社が提示した示談金額や条件が過大である、または経済的な理由などで応じられない場合、あるいは利用の覚えがない場合などに、請求を断る対応です。
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120 示談拒否の最も大きなメリットは何ですか?
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提示された高額な示談金を支払わずに解決できる可能性があること(「示談金を払わない解決」を目指す)です。
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121 ダウンロード後に当該ファイルをすぐに削除していた場合、示談を拒否しやすいですか?
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はい、裁判例において削除後の損害については責任を負わないとされているため、このような理由で示談を拒否しやすい状況となっています。
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122 示談を拒否する代わりに、訴訟になった場合の賠償額はどのように判断されますか?
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裁判例に基づき、請求額が大幅に減額された賠償額に限定される可能性があります。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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123 提示された実損害額(裁判所の計算方法)が、包括示談金よりも低額に留まる場合、示談を断ることは選択肢となりますか?
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はい。実損害を超える範囲については責任を負わないため、示談を断るのも選択肢です。
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124 共同不法行為の考えに基づき、他のトレント利用者が既に示談金を支払っている場合、自身の責任は減少する可能性はありますか?
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はい。複数のユーザーによる共同不法行為に該当するため、他のユーザーが損害を支払うことで、支払われた限度において自身の責任も減少する可能性は考えられます。
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125 示談拒否をしたことで、民事訴訟になる確率が高まったという事実はありますか?
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当該法律事務所の経験上、示談拒否をしたために民事訴訟の確率が上がったという事実は生じていません。
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126 示談拒否の方針を取った場合、弁護士は依頼者の氏名を相手方弁護士に匿名のままで交渉できますか?
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いいえ、代理人として交渉をする以上、どの方からのご依頼なのかは相手方弁護士に伝え、明確にするほかないため、匿名での交渉は一切不可能です。
5. 「示談金ビジネス」に対する評価
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127 「トレント示談金ビジネス」とは、どのような行為を指して揶揄されていますか?
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権利者側があえて著作権侵害の状態を野放しにし、意図的に示談金を請求できるケースを増やしている、または開示請求を遅らせて損害額を吊り上げている、としてネットやSNSで揶揄されたり非難されたりしている表現です。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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128 制作会社が示談金を請求する行為は、法的に見て正当な権利行使ですか?
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はい、トレント利用者が著作権侵害をした以上は賠償義務が生じるため、権利者側の請求自体は当然に認められるべき正当な権利行使です。
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129 制作会社側のスタンスを「示談金ビジネス」と非難することは推奨されますか?
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いいえ、非難は制作会社側に対する名誉毀損の余地すらあり、推奨されません。
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130 ITJ法律事務所の包括合意の提示額(88万円)は、「示談金ビジネス」と評しにくいですか?
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利用の数が多いケースであれば妥当な水準と評価可能であり、示談金ビジネスという非難は当たらないと考えられます。
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131 赤れんが法律事務所の示談提示額(1ファイル50万円、追加20万円)は、「示談金ビジネス」と非難されやすいですか?
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はい、裁判例に照らした賠償額の水準と比べて高額な傾向にあるため、非難されやすいところかもしれません。
D. 複数請求のリスクと弁護士の戦略(Q132~Q148)
1. 複数請求の発生理由と確率
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132 トレント案件において、開示請求が複数の制作会社から届く可能性は高いですか?
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はい、現在のトレント案件においては、開示請求が複数社になる可能性は非常に高いのが一般的です。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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133 複数請求になる主な理由は何ですか?
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①利用者が長期間に渡り、日常的に複数の動画をアップロードしてしまっていることが多いこと、②アダルトビデオの製作会社が多数あり、どの会社も一律に違法アップロードに徹底した対応をとるスタンスであること、などが挙げられます。
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134 複数の動画をダウンロードしている場合、開示請求が複数社になる確率は高くなりますか?
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はい、単純に一つの作品だけダウンロードしていることは稀であり、複数の動画をダウンロードしているケースでは複数開示になる確率が高い傾向にあります。
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135 現在、トレント案件に対応しているアダルト動画の制作メーカー数はどのくらいありますか?
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当該法律事務所では、これまで70を超える制作会社の案件を対応しています。
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136 現在、トレント案件に対応している制作会社側の代理人弁護士の数はどのくらいですか?
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以前は2事務所でしたが、最近ではITJ法律事務所、赤れんが法律事務所、弁護士法人オルビス、八重洲コモンズ法律事務所など、5事務所に増えています。
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137 東京地裁における発信者情報開示命令申立事件の件数は増加傾向にありますか?
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はい、2025年10月時点のデータからも、同種事件の件数は増加傾向にあると推測できます。
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138 制作会社からの開示請求は、特定のファイルに関して立て続けになされる実情がありますか?
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はい、特定のファイルに関しての開示請求が立て続けになされている実情がよくわかるとされています。
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139 既に開示請求を受けている場合、プロバイダー契約を解消すれば、以後の開示請求を止められますか?
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いいえ、契約を解消しても過去のログが消える訳ではないため、効果はありません。
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140 以前の弁護士に「二度目(二社目)の請求は稀」と言われたが、実際にはどう考えるべきですか?
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これは完全に誤りではないかと考えられ、特に過去に複数ダウンロードしたことがある方は、二度目が来る可能性が高いと思っておいた方が間違いがないとされます。
2. 弁護士による複数請求への戦略
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141 複数請求が来る可能性がある場合、弁護士に依頼する最大のメリットは何ですか?
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ログ保存期間の経過を待つ戦略的な交渉を通じて、追加請求リスクがない状態での解決を目指せることです。
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142 ログ保存期間の経過を待つことで、相手方弁護士からの請求や督促を止めることはできますか?
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はい、弁護士が受任通知を送付し交渉窓口となることで、相手方弁護士からの以後の請求や督促はピタッと止まることが大半です。
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143 複数の制作会社と包括合意を進めることの危険性は何ですか?
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複数の制作会社と包括合意を進めると、負担する示談金額は一気に数百万円にまで膨れ上がります。
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144 複数請求が不安な場合、費用総額を確定できるプランはありますか?
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はい、「おまとめプラン」が用意されています。開示請求が届いた案件数、会社数を問わず、追加費用なしで、確定した総額にてすべての案件について弁護士対応が可能です。
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145 おまとめプランのノーマルコースの着手金と報酬金はいくらですか?
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ノーマルコースの着手金は308,000円(税込)、報酬金は308,000円(税込)です。
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146 おまとめプランのロングコースの対象となるプロバイダーの例を教えてください。
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ソフトバンク株式会社、株式会社NTTドコモ、株式会社オプテージなど、ログ保存期間が2年以上と判断されるプロバイダーが対象です。
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147 複数請求が不安で弁護士費用を気にしている利用者に対し、おまとめプランはどのように役立ちますか?
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弁護士費用の総額が予め確定するため、追加の開示請求がたくさん来ても費用負担が際限なく増える不安を軽減できます。
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148 弁護士に依頼する目的として、「即示談」ではなく「ログ期間を経ての解決」を希望することは重要ですか?
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はい、ログ期間経過までしっかりと追加の開示請求の有無を見極めての対応を推奨・実践しており、ご自身の希望するサポートを明確にする上で重要です。
E. 裁判例と損害賠償額の詳細(Q149~Q162)
1. 主要な裁判例と損害計算
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149 トレントの損害賠償額算定に関する主要な裁判例はいくつありますか?
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3つあります。①東京地方裁判所令和3年8月27日判決、②知的財産高等裁判所令和4年4月20日判決(①の控訴審判決)、③大阪地裁令和5年8月31日判決です。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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150 これらの裁判例は、利用者側から起こされた裁判ですか?
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はい、著作権侵害行為を行ってしまった方複数名が原告となって、著作権侵害を主張する会社側を被告として裁判を起こしたものです。
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151 裁判所は、損害賠償額を計算する際に、どの料金を基準としましたか?
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DVD/Blu-ray版の料金ではなく、ダウンロード版の料金から制作会社が受け取っていた利益額に基づき計算しました。
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152 知財高裁の判決で、ある原告(HD版が問題)について実際に認容された賠償額の計算式を教えてください。
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74回(ダウンロード回数) × 482円(利益額) = 35,668円です。
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153 裁判例が示した損害賠償の計算方法において、ダウンロード回数が増えるほど賠償額は高額になりますか?
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161回(ダウンロード回数) × 372円(利益額) = 59,892円です。
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154 裁判例が示した損害賠償の計算方法において、ダウンロード回数が増えるほど賠償額は高額になりますか?
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はい、ダウンロード回数が増えるほど、賠償額は高額になります。
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155 ダウンロードした動画が人気作品や新作である場合、損害額は大きくなりますか?
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はい、ダウンロード回数が増える傾向があるため、損害額は大きくなることが多いです。
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156 3作品をアップロードし、合計ダウンロード回数が6,000回の場合の損害額の試算例はいくらですか?
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合計で2,342,000円になる試算例があります(内訳は動画1:1,000回×482円、動画2:2,000回×372円、動画3:3,000回×372円)。
2. 責任期間の認定に関する裁判所の判断
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157 制作会社側は、トレントファイル利用開始前や停止後の期間も含めて賠償責任を負うと主張しましたか?
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はい、制作会社側は、利用者がビットトレントシステムを用いる以前と、用いるのを止めた以後の期間も含めて責任を負うべきだと主張しました。
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158 裁判所は、制作会社側の責任期間に関する主張を認めましたか?
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いいえ、裁判所は、ビットトレントシステムを用いる前と用いるのを止めた後にまで責任を負わせる根拠はないとして、被告の主張を認めませんでした。
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159 東京地裁の判決は、いつまでを責任期間と認定しましたか?
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意見照会が届いてから、利用者側が弁護士に相談した日までの期間と認定しました。
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160 知的財産高等裁判所(高裁)の判決は、いつまでを責任期間と認定しましたか?
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東京地裁の判決よりも終期を早め(ユーザー側に有利に短く)、弁護士に相談した日、またはユーザーがトレントファイルを削除もしくは利用を停止した日と認定しました。
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161 大阪地裁の判決は、トレントファイルがすぐに削除されていたケースについて、いつまでを責任期間と認定しましたか?
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トレントファイルを削除するまでの3時間と認定し、ダウンロード後から削除するまでの間の範囲についてのみ損害責任を負うと判断しました。
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162 大阪地裁の裁判例は、ファイルをダウンロードした直後に削除していた事情を主張した利用者にとってどのような点で有利でしたか?
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ダウンロード後、数時間の間に当該作品ファイルを削除していた事情を陳述書にして提出した結果、裁判所は損害について削除するまでの間の範囲についてしか責任を負わないと判断しました。
F. 弁護士によるサポートと費用(Q163~Q200)
1. 弁護士に依頼するメリットと目的
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163 トレント案件の解決において、弁護士に相談・依頼する最大のメリットは何ですか?
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専門知識に基づき、ログ保存期間や複数請求のリスクを考慮した最善かつ確実な解決策を提案できることです。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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164 弁護士に依頼することで、煩雑なプロバイダーや相手方とのやり取りは軽減されますか?
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はい、煩雑なプロバイダーへの対応や、相手方弁護士との交渉窓口を全て引き受けるため、依頼者の精神的な負担を大きく軽減できます。
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165 弁護士はどのような方針で示談交渉を進めますか?
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安易な即示談ではなく、ログ保存期間の確認や、ケースによっては示談拒否の判断を含めた戦略的な問題解決を目指します。
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166 弁護士が提供する戦略的判断には、どのようなものが含まれますか?
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提示された示談金額の拒否または減額、ログ保存期間を踏まえた示談猶予の申し入れ、過剰請求への対応などが含まれます。
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167 万が一、民事訴訟になった場合でも弁護士は対応可能ですか?
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はい、民事訴訟の対応経験も複数あることから、経験に基づく安心安全な解決に導くことが可能です。
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168 刑事事件化という最悪の事態を避けるための知識経験も弁護士は豊富ですか?
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はい、刑事事件という最悪の事態を避けるための知識経験も豊富です。示談が成立すれば、刑事罰も前科も回避できます。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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169 弁護士に依頼する目的は、どのような希望を明確にすることですか?
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①同意/不同意の回答方針、②提示示談金額を払わない・減額する弁護活動を望むか、③家族に知られずに解決したいか、④ログ期間を経ての解決を希望するのか、⑤訴訟や刑事告訴を避けたいのか、などを明確にすることです。
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170 弁護士に依頼する際、遠方に住んでいる場合でも相談・依頼は可能ですか?
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はい、Zoomを利用したオンライン相談を広く活用しており、全国どこからでも相談・依頼が可能です。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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171 依頼者への進捗報告はどのように行われますか?
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案件の進捗はオンライン上の「確認丸」システムにて随時ご報告・共有されます。
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172 弁護士に依頼した後、相手方弁護士からの連絡に回答する必要はありますか?
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弁護士が受任通知を送付し交渉窓口となるため、ご依頼者様が直接相手方とやり取りする必要はなくなります。
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173 弁護士はどのような裁判例に基づき方針を決定しますか?
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東京地裁、知財高裁、大阪地裁の3つの主要な裁判例を深く理解し、分析した上で対応方針を決定します。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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174 弁護士は、トレント利用者が抱える様々な不安(賠償額、分割、追加請求、刑事責任、会社への影響)についてアドバイスしてくれますか?
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はい、これらトレント相談者が抱える様々な悩みについて、納得できる説明やアドバイスをしてくれる弁護士を選ぶべきです。
この点。依頼者の方のご不安の声(トレント利用者の体験談)については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
2. 弁護士費用と料金プラン
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175 法律相談の費用はいくらですか?
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30分あたり5,500円(税込)です。
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176 法律相談の支払い方法は何ですか?
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銀行振込またはPayPayにて支払いが可能です。来所の場合は現金での支払いも可能です。
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177 法律相談は土日祝日でも可能ですか?
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いいえ、土日祝日は電話受付及びご相談を実施していません。
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178 弁護士費用プランにはどのような種類がありますか?
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「通常プラン」「おまとめプラン」「訴訟プラスプラン」があります。
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179 通常プランの1社目の着手金はいくらですか?
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220,000円(税込)です(以前の165,000円から価格改定されました)。
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180 通常プランで2社目以降の他社からの開示請求が届いた場合、追加着手金はいくらですか?
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1社あたり77,000円(税込)です。
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181 通常プランで示談により解決した場合の報酬金はいくらですか?
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1社あたり165,000円(税込)です。
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182 通常プランで示談によらず相手方の請求を断念させた場合の報酬金はいくらですか?
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1社あたり220,000円(税込)です。
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183 おまとめプランのノーマルコースの着手金と報酬金はいくらですか?
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それぞれ308,000円(税込)です。
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184 おまとめプランのショートコースの対象となるプロバイダーの例を教えてください。
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笠岡放送株式会社、井原放送株式会社、株式会社ケーブルメディアワイワイ、大分ケーブルテレコム株式会社など、ログ保存期間が1年未満のプロバイダーが対象です。
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185 訴訟に発展した場合に備える「訴訟プラスプラン」の費用はいくらですか?
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おまとめプランの着手金・報酬金にそれぞれ110,000円(税込)を追加することで、民事訴訟(一審まで)の対応が可能です。
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186 弁護士費用が2025年8月に改定された主な理由は何ですか?
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トレント案件の複雑化、プロバイダー対応の多様化、ログ保存期間経過待ちによる対応期間の長期化などを踏まえ、リーガルサービスの質を維持・向上させるためです。
3. 解決までの流れとその他の実務的な疑問
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187 弁護士に依頼した場合の一般的な解決までの流れを教えてください。
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①意見照会書の受領、②弁護士への相談・方針決定、③受任通知の発送、④開示の実行と通知書受領、⑤ログ保存期間の経過待ち、⑥交渉・最終解決(和解または示談拒否)という流れを辿ります。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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188 弁護士とのやり取りは、どのように行われますか?
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LINEやメール、電話を中心にやり取りをさせて頂いております。LINEでの直通のやり取りも可能です。
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189 弁護士に依頼した後、ご自宅に追加の意見照会書が届く可能性はありますか?
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はい、プロバイダーによっては契約名義人にしか送付しない態度をとるところも少なくないため、弁護士が介入した後でも追加の意見照会書が届くケースがあります。
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190 示談が成立した場合、その後案件が終了した後でもプロバイダーから意見照会書が届くことがありますか?
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はい、届くことがありますが、その場合は示談済み、和解済みであることを回答書に記載することで、その後の請求はないままで終了します。
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191 示談拒否をした後、制作会社側が損害賠償請求訴訟を起こす可能性はありますか?
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理論上、可能性はありますが、当事務所の統計上、訴訟になる確率は1%未満です。
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192 示談の申し入れを無視し続けた場合、差し押さえのリスクがありますか?
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示談の通知を無視したからといって直ちに差し押さえのリスクが高まるという客観的データはありません。差し押さえは、民事訴訟で敗訴し、判決が確定した場合などに強制執行として行われるものです。
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193 示談を拒否して訴訟になった場合、弁護士はどのような判決を目指しますか?
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請求棄却の判決、もしくは低額での和解を目指します。
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194 制作会社が請求の根拠としているIPアドレスが多数列挙されているのはなぜですか?
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開示請求者は、一度の発信者情報開示命令申し立ての際に数百の発信者ログの開示を求めることが通常であり、列挙されたIPアドレスはすべてが意見照会書を受け取った方の利用によるものではありません。
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195 弁護士に依頼する際、弁護士事務所の評判や過去の懲戒処分歴を気にする必要はありますか?
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赤れんが法律事務所の代表弁護士のように過去の懲戒処分歴が表示されるケースについて不安を覚える相談者もいますが、当該法律事務所の経験上、交渉以外で法的に問題となる対応をとってきたことはないので、過度に心配する必要はありません。
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196 トレント案件の相談は、どのような事務所に依頼すべきですか?
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ログ保存期間や複数請求のリスクを踏まえ、安易な「即示談」ではない戦略的な解決を提案できる、トレント案件に注力している専門の弁護士を選ぶべきです。
この点については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
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197 弁護士に依頼する費用について、総額が青天井になることを防ぐ方法はありますか?
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複数社からの請求にも追加費用なしで対応できる「おまとめプラン」を利用することで、費用が青天井になることを防げます。
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198 トレント利用者は通常、周囲に相談できる状況にありますか?
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いいえ、意見照会書を受領した利用者の方は、周囲に相談できる状況には通常なく、不安を覚えネットで情報収集をすることが多いのが実情です。
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199 トレントの利用をやめるために、まず何をすべきですか?
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ご自身のパソコンにファイル共有ソフトがインストールされているかを確認し、以後のリスクを抑えるために直ちにアンインストールをしてください。
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200 アンインストールの前に、何かすべきことはありますか?
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それまでのトレントファイルのダウンロード履歴を画面保存するなどしておくと、後の証拠になることがあります。
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所





